1話
エイミー
2003年12月
12月の寒い夜だった。新しく降った雪が、私が運転している道路を囲む高い木々や地面を覆っていた。もう30分ほど運転しているが、自分の車以外の車両は見かけていない。同僚の誕生日を祝うために彼女の家まで行ったことを本当に後悔していた。街まで戻るのは長い道のりで、私は一人で、しかも妊娠中だった。自分の直感に従って真っ直ぐ家に帰るべきだった。まあ、人生とはそういうものだ。「〜すべきだった」の繰り返し。
言うように、着実に進めば勝利する。森が鹿の群れの住処だと知っていたので、ゆっくりと車を走らせた。偶然鹿にぶつかりたくなかったし、8ヶ月の妊婦としてまさかの事故も避けたかった。カーラジオをつけて寂しさを紛らわし、フロントガラス越しに満月や澄んだ夜空に瞬く星々を眺める。とても美しい夜だった。クリスマスイブもこんな夜だといいな。ああ、もうすぐクリスマスだ。私は静かに運転しながらラジオを聴き、赤ちゃんとの次のクリスマスを想像していた。ラジオで流れる曲に合わせて歌いながら、ステアリングホイールを指で叩き、娘との完璧なクリスマスを思い描く。
歌声に抗議するように、ダイアナが大きく蹴ってくるのを感じ、私は本能的にお腹をさする。わかってるよ赤ちゃん、あなたも眠りたいのね。でもママはまず家まで運転しなきゃいけないの。心配しないで、家に着いたらあなたのために温かい牛乳を一杯飲むから。
私はもうすぐシングルマザーになる。夫もなく、娘が「お父さん」と呼べる人もいない、こんな人生になるとは想像もしていなかった。でも、恋に落ち、そして高くつく過ちを犯す。彼に妊娠を伝えたとき...つまり私が妊娠したと伝えたとき、彼は中絶するためのお金をくれて、もし赤ちゃんを産むなら「混血児」とは何の関わりも持ちたくないと言った。「混血児」が何を意味するのかは理解できなかったが、彼が父親になりたくないという気持ちは十分に理解できた。自分の愚かさに何ヶ月も泣いた。どうしてこんなに不注意だったのだろう？
彼が逃げた後、彼の言うとおりに中絶すべきだと決めた。確かに経済的には一人で子供を育てられるだけの余裕はあったが、それが苦労の連続になることもよく分かっていた。両親は仕事と私と弟の世話を両立させるのに苦労していたのに、一人の親ではなおさらだろう。そんな理由で中絶を正当化し、クリニックに行った。
その日、中絶クリニックの待合室で順番を待っていると、考えが変わり始めた。自分の赤ちゃんを殺すなんて考えられなかった。私の赤ちゃんなのだ。まだ平らなお腹をさすりながら、一時の弱さを謝った。急いで看護師のところに行き、考えが変わったと伝えた。彼らは、もし迷いがあるなら、中絶は第一期のみ可能だと言った。もう一つの選択肢は養子に出すことだった。私はもう迷いはないと伝え、赤ちゃんを育てると言った。看護師の一人がシングルマザー支援グループのカードをくれた。私はシングルマザーになるのだ！頭を振って泣き始めた。看護師は私を抱きしめて言った。「大丈夫よ。私も美しい男の子のシングルマザーよ。彼を産んだことを後悔したことは一度もないわ。あなたもきっと同じように感じるわよ」
そして今、私はクジラのように大きくなって、もうすぐ産まれそうだ。ダイアナ、あなたの到着に向けて準備を終えなければ。もうすぐベビーシャワーがあるから、家族や友人から必要なものはすべて揃うことでしょう。
父親が見当たらない状態で妊娠していると両親に伝えたとき、彼らはあまり喜ばなかった。でも兄は興奮していた。ウィリアムズ家の子孫がまた一人増えると。その興奮が両親にも伝染したのか、今では彼らも小さなダイアナのことばかり考えている。
ダイアナ。私はずっとこの名前が好きだった。女神の名前、正確には月の女神の名前だ。もう一度月を見上げる。大きく、美しく、そして孤独。今のこの瞬間の私と同じように。自分のジョークに笑ってしまう。
突然、車の前に彼が立っているのが見えた。ブレーキを踏んだにもかかわらず、彼にぶつかってしまった。車は道路の脇に滑り、完全に停止した。なんてこと！誰かにぶつかってしまった！急いでシートベルトを外し、車から出て彼が怪我をしていないか、医療が必要かを確認しようとした。ポケットから電話を取り出し、911に電話をかける。
「911。どういった緊急事態ですか？」オペレーターが尋ねた。
「車で誰かにぶつかりました。本当に、彼が見えなかったんです」オペレーターに説明しながら、彼を探す。彼はどこ？遠くにはいないはず。道路を行ったり来たりして何か痕跡を探す。想像だったのだろうか？車を見ると、バンパーが少し曲がっている。確かに何かにぶつかったのだ。もしかしたら鹿だったのかもしれない。
「オペレーターさん、すみません。鹿にぶつかったみたいです。ソルティムーンの森を運転していて、外はとても暗いです。人だと思い込んでいたのかもしれません。誤解させてすみません」
「大丈夫ですよ、奥さん。こういった電話はよくあります。車に戻って家に帰るのが一番です。あなたが安全に車に戻るまで通話を続けましょう」オペレーターは親切に言った。
「ありがとう、とても親切ですね」電話をコートに入れ、頭を上げて森を見る。フクロウの鳴き声と狼の遠吠えが聞こえる。これはまずい。安全な車に戻ったほうがいい。
振り向いて車に向かって歩き始め、立ち去る前に車がぶつかった何かの証拠を見つけようと舗装路を見下ろす。夢中になりすぎて、車の横に立っている男に気づかなかった。
「外出するにはいい夜だね？」彼は不気味な低い声で言った。血の気が引くのを感じた。ゆっくりと顔を上げ、誰が話したのかを見る。その光景に首筋の毛が逆立ち、心臓がパニックで激しく鼓動した。
彼は大柄な男で、身長は6フィート以上あり、茶色の濃い髪と黒い目をしていた。狩猟服と大きな黒い軍用タイプのブーツを履いていた。腕を組んで車にもたれかかり、助けを求めて叫んでも誰にも聞こえない場所に私が一人でいることを明らかに面白がっていた。震える手をポケットに突っ込んで電話を探るが、彼は止める。
「電話を取り出す必要はない。彼らが間に合うわけがない」彼はニヤリと笑い、私は彼に牙があることに気づいた。牙？吸血鬼や狼男は童話で聞いたことがあるが、実在するはずがない。それとも？
「とぼけるな、女。お前は俺が何者か知っている。お前も同じだ。お前の匂いは1マイル先からでもわかる」彼の目はより暗くなり、明らかに私に怒っていた。
「す-すみません、あの、車であなたにぶつかってしまったなら。あなたが見えなかったんです。私-私は持っているものは何でも差し上げます。お-お金でも、宝石でも、ただ私と赤ちゃんを傷つけないでください。お願いします」恐怖で唇が震え、うまく話せなかった。足がくずおれそうになるのを感じた。立っているのに全力の意志力が必要だった。
「お前の金なんかいらない。必要なのは、お前らがこの領土に不法侵入して俺のパックに問題を起こすのをやめることだ。お前を見せしめにして、お前らが俺の領域に入る気を起こさないようにしてやる」一瞬で彼は私の目の前にいた。腕をつかんでねじった。痛みで叫び、その叫び声は森中に響いた。
「やめて。私の赤ちゃん...」足の間から水が流れるのを感じた。破水した。早産が始まっていた。
「お前もお前の赤ちゃんも今夜死ぬ」
「いいえ、お願い。今破水したの。病院に行かなきゃ」彼に懇願し、すすり泣きが体を揺さぶった。こんなことが起きるなんて。神様、私は何をしたというのですか？
「お前は死に、赤ちゃんも死に、誰もお前の死体を見つけることはない」彼は片手で私の腕を背中の後ろにねじり、もう片方の手で頭を引っ張り、首に噛みつき、喉から肉の塊をもぎ取った。再び叫び声を上げると、首からの痛みが体中に広がった。
彼は私を地面に押しつけ、私は出血を止めようと両手で首の横を押さえた。「これがお前たちローグが俺の領域に入ったときの報いだ！」と彼は私に向かって叫んだ。大きな黒いブーツで私を蹴り、私は仰向けに転がった。凍った歩道の上で彼の足音が聞こえ、そして彼は去っていった。私を轢かれた獣のように道路の真ん中に一人残して。
冷たく凍った歩道に横たわり、頬に涙を流しながら、空の月を見上げた。月の女神のことを考え、奇跡を求めて静かに祈った。
電話のことを思い出し、コートから取り出す。オペレーターが必死に助けが必要かと尋ねているのが聞こえた。「た-すけて...」と言おうとしたが、血のせいで声が聞こえなかった。
咳をすると、どろりとした血が口から噴き出し、赤い泡をぶくぶくと吐き出した。首から温かい血が凍った歩道に溜まり、髪が地面にくっつくのを感じた。心臓の鼓動がゆっくりになり、一拍一拍が耳に響く。目が重くなり、人生が突然目の前によみがえった。
これが私の死に方なのか...
妊娠中で、一人で、血まみれで。
最後にもう一度月を見上げると、月の光が頬にキスをしたような気がした。