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45話

第四十五章:記憶喪失

エレナ

「もう話したくないし、それに全部終わったことよ。彼は私に近づかないし、私も彼に近づかない」彼女は理解したように頷いた。

彼女の目には何かがあった。何かを繋ぎ合わせようとしているような。直感と言ってもいいけど、この女の子は私に話していないことがある。彼女は単に親切心から友好的になっているわけではない。

「バーナードを下の名前で呼んだの?」それは質問ではなく、断言だった。

しまった、もちろん彼女は不思議に思うだろう。彼女の目から見れば、はぐれ狼が族長を敬称なしで呼ぶなんて。下位の狼がアルファを敬称なしで呼ぶのは不適切とされている。家族や友人、あるいはつがい...