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672話

彼女の方から一線を引くと言い出したのに、アンソニーがあの言葉を口にした時、ジュニパーは心に針を刺されたような痛みを感じた。本当に、ひどく痛かった。

ジュニパーは思った。「そうよね、私たちに過去があると思い込んでいたのは私だけ。彼にとっては何もなかった。彼は一度も私に彼女になってほしいなんて言わなかったんだから」

そう考えながら、彼女は痛みを押し殺して、どうでもいいような笑顔を浮かべた。「そうね、私たちの間には何もなかったわ。ただの上司と部下、心配しないで」

彼女の目は澄んでいて、軽く微笑んでいたが、アンソニーは急に胸が重くなるような不快感を覚え始めた。

「アイリッシュさん、会社のために...