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三十一

ニコの視点

大広間に足を踏み入れた瞬間、私の興奮はすべて霧散してしまう。

私の後ろから秘書が入ってきて、片腕に書類の束を抱えている。

私の意識は全くここにない。まだオフィスにいるような感覚だ。ジャスミンはまだあそこにいるだろうかと考えてしまう。

「遅いぞ、クリフォード」と取締役会の代表が言う。見上げると、グレーのスーツに黒いネクタイを締めた大柄な男が丸テーブルの主席に座り、何かを証明するかのようにスマートウォッチをタップしている。

私は肩をすくめて目を回し、広間の奥へと歩いていく。

「何か問題でも?」私の声が響き渡る。無関心と挑戦が入り混じった調子で、テーブルに向かって歩みながら言...