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二十六

ジャスミンの視点

廊下を急ぎ足で歩いていると、ギリギリのところでチャドを避けることができた。遠くに男性の薄い影が見えたような気がする。柑橘系とサンダルウッドの香りが空気を満たしているけど、私は無視した。チャドや過去から逃れることに必死で、他のことに気づく余裕なんてなかった。

会社の外に出ると、やっと安堵のため息をつくことができた。駐車場には多くの車が停まっていたけど、私はそれらをすべて素通りした。そのとき、携帯が鳴った。急いでバッグから取り出すと、会社のマネージャーからのメールだった。

「採用されました。明日朝7時から勤務開始です」

しばらくの間、ただそこに立ちすくんでいた。ホテルより...