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十八

ジャスミン視点

ホテルの廊下を、小脇に箱を抱えて支配人室へと向かう。数分前、支配人宛てに小包が届いたのだ。普通なら、ホテルの前に荷物を置きっぱなしにしたりせず、直接本人に届けに来るものだけれど、こういうことが全くないわけでもない。

だから、フロント係として働いている私は、時々こうして自分で彼の注文品を届けに行くことがある。

エレベーターに乗り込むと、カチリと音を立ててドアが閉まる。誰も乗っていないのを見て、私はほっとため息をついた。実を言うと、昨日のニコ・フェラーリとの一件で、まだ舞い上がっているのだ。

無理やり彼の車に乗せられたのかもしれないけれど、それでも、あの瞬間のことを少しも後...