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ジャスミン

会社にいられるほど体調は良くなかったけれど、あの屋敷にいたら気が狂ってしまいそうだった。穏やかな日差しが肌を優しく焼き、建物に一歩足を踏み入れるといつものひんやりとした空気が漂う(館内に設置された何百台ものエアコンのおかげだ)。スタッフたちは白と黒の社用制服に身を包み、それぞれの業務に勤しんでいる。まるで私がここを離れたことなどなかったかのようだ。

オフィスへ向かうため、エレベーターが到着するのを待つ。昨夜のニコとの会話が脳裏をよぎる。

こうも次から次へと命に関わるような問題に巻き込まれるのはうんざりだわ、と私は言った。自分の気持ちをすべて口に出したのは、数少ないことだった。...