Read with BonusRead with Bonus

十二

ジャスミン視点――

「悪い、怖がらせちまったか、お嬢ちゃん?」

彼はそう言うと、まるでついさっきまでそこにあったのを忘れろとでも言うように、こともなげに銃をポケットに隠す。

彼が一歩前に踏み出してくるまで、自分が後ずさっていたことに気づきもしなかった。蛇のような緑の瞳には、暗い光が宿っている。今回の彼は、何かが絶対におかしい。

「こっちに来ないで!」

思わず叫んでしまう。

彼は血まみれで、ついさっきまで銃を手にしていた。それが誰の血かなんて、知りたくもない。

刑務所にいるべき人間よ。彼のすべてが、文字通り『危険』だと叫んでいる。

「なあ」

ニコがこちらへ歩き続けながら、何かを言い始...