第4話
イザベラ
アパートはまるで私がそこで一生を過ごしてきたかのように整然としていて、計画通り、残しておきたくない思い出の品が入った箱をいくつか処分した。一週間が経ち、私はすでに新しい環境と近隣に慣れつつある。朝のジョギングから建物に戻ると、コンシェルジュのスチュアートが私に声をかけた。
「モレッティさん、外出中に花束が届きましたよ」彼は私に花を手渡し、私はそれを受け取って彼に礼を言った。
エレベーターに乗ると、赤いバラの花束に添えられたカードを見た。
「イザ、僕は何度も失敗したことを知っているけど、もう一度会うチャンスをください。金曜日の午後7時に私たちのお気に入りのレストランで会いませんか。ドム」
私は鼻を鳴らした。彼は私の好きな花さえ送れないのだから、私のお気に入りのレストランの名前なんて知らないだろう。アパートのドアを開けるとすぐに、カードと一緒に花をゴミ箱に捨てた。それが視界に入ることなど問題外だ。私たちは3ヶ月別居し、2週間前に離婚したばかりなのに、彼が私に会いたいと思うのは今になってからだ。さらに彼は私を裏切った女性と一緒に法廷に来る厚かましさもあった。もう、せっかく機嫌が良かったのに台無しにされた。
シャワーを浴びたばかりのとき、ドアをノックする音がした。バスローブを締め、髪を乾かすためにタオルを手に取る。
ドアを開けると、背の高い黒髪の男性が立っていた。彼の髪は低い位置でお団子に結ばれ、手入れの行き届いた黒いひげを生やしていた。しかし私が気づいたのは、彼のヘーゼル色の目と、誰かを思い出させるエクボだった。
「こんにちは、邪魔するつもりはなかったんです。私はノックス、あなたのアパートのすぐ上のペントハウスに住んでいます」と彼は切り出した。
「はじめまして」と私は不安げに返事をした。
「月曜の朝からリフォーム工事を始めるんですが、スチュアートから在宅勤務だと聞いたので、騒がしくなるかもしれないと警告しておこうと思いまして」
「教えてくれてありがとう、それはとても...思いやりがありますね」
「母はいつも、自分がされたくないことを他人にするなと言っていました」彼は再びエクボを見せる笑顔で答えた。
「あなたのお母さんはとても賢明な方ですね」
「そうですね」彼は手を打ち合わせた。「伝えることは伝えました。時々顔を合わせることもあるでしょうが、何か必要なことがあれば遠慮なく呼び鈴を鳴らしてください。まあ、技術的には私にはドアがないんですが、スチュアートかトムに連絡してもらえば、ペントハウスへのアクセスを許可します。ですから砂糖や小麦粉や塩、あるいはコーヒーが必要な場合、または誰かとコーヒーを飲みたい場合、その他の温かい飲み物や冷たい飲み物なども...」
私は彼の不器用さに笑いをこらえた。「どうもありがとう、ノックス。遠慮しないわ」
「どういたしまして...あなたの名前を聞いていませんでした、イザベラ」
今度は私は声を出して笑った。「スチュアートがすでに漏らしたみたいね」
「ええ、でも自然に聞こえるようにしたかったんですが...」彼はため息をつき、頭に手をやった。「あなたは私をひどく緊張させます。普段はこんなじゃないんです。私の仕事は大勢の前で話すことなんですよ」
「それで、何のお仕事をされているんですか？」私は場を和ませようとして尋ねた。
「ああ、大したことではありません。私と兄弟たちが経営している会社の広報担当をしています」
「へえ、それはとても興味深いわ」
「まあ、ただのヘッジファンド会社です。あらゆる種類のものに投資しています」
「あなたの前でのパフォーマンスよりも仕事の方が上手だといいわね」と私はニヤリと笑って言った。
「約束します。メールアドレスか電話番号をいただければ、私が行った記事やインタビューを送ることもできますよ」
「また今度にするわ、ノックス。良い一日を」ドアを閉める前に私は言った。
彼の足音が遠ざかるまで、しばらくドアに寄りかかっていた。こんなイケメンたちはどこから湧いて出てくるの？すでにジャックス、アッシャー、そして今度はノックス。「一人失えば十人見つかる」という言葉は知っていたけど、それを文字通りに受け取るべきだとは思わなかった。
アッシャー
ノックスはため息をついてドアを閉めた。
「どうだった？」ジャックスが彼に尋ねる。
「最悪だ。こんなに女性の前でへまをしたのは生まれて初めてだ」
私はコーヒーを一口飲みながら鼻を鳴らした。「彼を送るのが良いアイデアだと思ったのか」とジャックスに言うと、彼は驚いた顔をした。
「くそ、彼は俺たち二人を合わせた以上の女を引っ掛けているだろ。でも俺も最初に彼女と話したとき緊張したよ」
「新しい戦略が必要だな」末の弟が私の隣に座りながら宣言した。「彼女のファイルの概要を教えてくれ」
「イザベラ・モレッティ、25歳、8歳のとき交通事故で母親を亡くし、19歳のときに脳腫瘍で父親を亡くした。父親は国内有数の弁護士で、彼女は小さな財産を相続した。在宅でグラフィックデザイナーとしてフリーランスで働いている。ドミニク・ジェンキンスという新進気鋭の弁護士と4年間結婚していたが、数ヶ月前に離婚して彼はすべてを失った。入手できた情報によれば、彼は職場の同僚と浮気していたらしい」元夫の名前を口にすると、二人の兄弟がうなった。「そして彼女はバーで会った日にこの新しいアパートに引っ越してきた」
「ペントハウスが空いていて、オーナーが我々のオファーを受け入れてくれて良かった」とノックスはニヤリと笑いながら付け加えた。
「価値以上の額を提示したんだ。もちろん受け入れるさ」とジャックスが続けた。
「話題を逸らさないでくれ」と私は二人を諭した。「明日の朝、誰かがジョギングに行って彼女とばったり会うべきだな」