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第70話

カヤ

兄と話をしていた。私は自分の気持ちについて話し続けたくなかったので、話題を変えた。「イサが赤ちゃんを産んだよ」私は口元が緩むのを感じた。笑顔になっていた。「それで、甥っ子?それとも姪っ子?」「姪だよ。そして名前を何にしたか知りたい?」「教えて」「お前の名前を付けたんだ。彼女の名前はカヤだ」私は涙が頬を伝うのを感じたが、悲しみからではなかった。喜びの涙だった。ほんの少し前の自分に驚いた。自分の巣穴を失った痛みで死にたいと思っていたのに、今は文字通り喜びで泣いていた。

「素晴らしいニュースね、クイル」「そうだろ。お前に会わせるのが待ちきれないよ」「祝福式はいつ?」祝福式は北部では全ての赤...