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第70話

私は右手の親指を薬指に当て、そこにある小さな傷痕をなぞる。その傷ができた記憶は、まるで昨日のことのように鮮明だ。母の死後まもなく、父は私を街はずれの医療研究施設に連れていくようになった。貧しい地区に隣接する砂漠地帯のどこかにあるその場所だ。「年次検査のためだ」と父は言った。当時の私は、高校に入学するまで毎週土曜日になぜそこに行かなければならないのか理解していなかった。ある検査の日、医師たちに一人残された。犯罪や捜査のドキュメンタリーを見るのが好きだった12歳の少女だった私は、探偵ごっこをしたくなった。その施設は少し不気味で、中で奇妙なことが起きているのではないかと想像し始めていた。診察室を抜け...