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第930話キミのことは何もできない

サラとアントニオは顔を見合わせた。二人の瞳は喜びの涙で潤んでいた。

「あの子に……施設長、どうかあの子に会わせていただけませんか?」

「申し訳ありません」

施設長は首を横に振った。「あの子は昨日、お子さんに恵まれなかったご夫婦に引き取られたばかりなんです。住所はお教えできますから、そちらを訪ねてみてはいかがでしょう」

住所を手に、アントニオは心から礼を言うと、サラを連れて急いでその夫婦の家へと向かった。

ドアの前に立つと、サラはアントニオの腕を強く握りしめ、躊躇した。声が震えている。「ねえ……あの子、エデンだと思う?」

あの子に違いない!

私たちのエデン……あまりにも長く、私たち...