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第514話

夜が明けても、セリーンの姿はどこにも見つからなかった。

彼女はまるで空気の中に消えてしまったかのようだった。

ジェームズは疲れた体を引きずりながら、報告のためにやって来た。

「バレンシア様、奥様、市内のすべての交差点や交通機関は監視下に置いていますが、確かにセリーンの痕跡はありません」と彼は報告した。

サラの眉はきつく寄せられていた。セリーンは何かを察知して、急いで逃げ出したに違いない。

アントニオはサラに温かい水の入ったカップを差し出したが、彼女は首を振って受け取らなかった。アントニオは無理強いせず、カップを置くと、重い視線で尋ねた。「セリーンはSKグループの誰かと連絡を取ったのか...