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第198話

バレンシア家の先祖代々の家で、フィリップの茶室には淹れたての茶葉の香りが漂っていた。経験豊かな主人であるフィリップは、手際よく茶を注いだ。彼はこの部屋に数え切れないほどの客人を招いてきたが、今日の集まりは彼がこれまで主催したどの会合とも違っていた。

湯気の立つ茶が急須から流れ落ち、彼は三つのカップに注いだ。最初のカップは隣に座っているブランデンに手渡し、二つ目は反対側に座っているセリーンに渡し、最後に自分のカップに注いだ。

本来ならば、セリーンは彼からこのお茶を受け取ることができないはずだったが、それでも彼はそれを差し出した。彼の動機は、セリーンとアントニオの間を取り持つことなど全くなかっ...