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建築家との対決

ソーレン

メーヴの部屋は陽光に染まっている。淡いピンク色の壁紙に反射して。その壁紙には、本物の薔薇の花びらが埋め込まれているのだと思う。この部屋は彼女の匂いがする――温かく、豊かで、その奥に、紛れもない木蓮の花の香り。この試練の最中ずっと平静を保とうと必死になっているにもかかわらず、その香りに俺は思わず唾を呑み込んでしまう。

もし誰かに、二日前にムーンライズに着いた時、本当は何をするつもりだったのかと訊かれても、答えられなかっただろう。俺は城に侵入した――警備兵にたやすく捕まることなど承知の上で、クソったれな窓を叩き割った。だが、その時はもう、何もかもどうでもよかった。彼女の元へ行かなけれ...