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第387話

イーヴァンダーはドアを閉める。鍵がカチリと音を立て、一瞬、私の耳に聞こえるのは自分の胸の中で激しく鳴る鼓動だけだ。

彼は...葛藤しているように見える。自信がなく、落ち着かない様子。

「あなた...バニラキャンドルの匂いがする」と私は囁く。その言葉を声に出したのか、頭の中だけで言ったのかも定かではない。

でも彼は私を見つめ、視線を合わせたまま「そうか?」と静かに尋ねる。彼の声には聞き慣れない調子がある。以前よりも柔らかく、緊張感が少ない。

私はうなずく。喉に詰まる塊を飲み込むことができない。

「なぜ?」と私は尋ねる。それが今、私の頭の中で必死に飛び回っている唯一の言葉だから。

「な...