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第259話

風が私たちの上をささやく。夏なのに、小さな銀色の氷片が頬に食い込んでくる。ここでは何もかも違和感がある。長く枯れた草が冷酷な風に揺れ、空気は冷たすぎて肌を刺す。空は漆黒で月もなく、まるで夜が訪れて世界への支配を緩めることを拒んでいるかのようだ。

空気には魔法が満ちている。良い種類のものではない。

死の匂いが鼻に届き、私は震える。エラが私を見つめている、彼女の目は闇の中でほぼ黒く見える。彼女は今まで見た中で最も小さな袋を取り出す。手のひらに収まるほど小さなものを地面に置く。彼女は服を脱ぎ始める。「服を脱いで、マディ。行かなきゃ。ここには私たちだけじゃない」

まるで返事をするかのように、遠吠...