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第210話

イスラ

アラタールが私に一歩近づいてくる。体は後ずさりしたいと懇願しているが、私は踏みとどまる。背後でエメリーは彫像のように静止している。ちらりと見ると、彼女の目は...恐怖で丸くなっている。彼女が怖がっているなら、決して恐れを知らない彼女が怖がっているなら、私も怖がるべきだろう。

でも怖くない。この男、この魔法使いが手を伸ばし、氷のような愛撫で私の頬骨に指先を滑らせても。彼の触れ方は氷のように凍えるような冷たさだ。私は身震いして彼から離れたいという衝動を抑える。

「君は宝だよ、イスラ。そして自分がどれほど価値があるのか、わかっていないだろう?」

「私にはメイトがいる」と、今まで聞...