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第912話

レオンは彫像のように立ち尽くし、その深い瞳をイザベラに向けていた。

なぜか、レオンの表情を見ると、イザベラは少し悲しい気持ちになった。

次の瞬間、イザベラは頭を下げ、小さな少年の手からフルーツバスケットを受け取り、微笑んだ。「ありがとう」

「どういたしまして、さようなら」少年は満面の笑みを浮かべると、くるりと向きを変えて走り去った。

バスケットの中の果物を見下ろしながら、イザベラは心に温かさを感じた。

将来一緒になることはできなくても、彼の今の気持ちは本物に思えた。

イザベラの目に涙が浮かんだが、髪をさっと振り、レオンに向かって寛大な笑顔で手を振った。

イザベラが手を振るのを見て...