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第54話

ハドリアン

私は闘技場の観客席の下の影に立っている。トーナメントが始まるのを待ちながら、もう一時間以上ここに立ち続けている。今年は参加者があまりに多い。多すぎるほどだ。

彼らのほとんどは殺しの技術を持った熟練の兵士たちだ。私の姉の大隊から何人かの顔を認識している。トーナメントは血なまぐさい試みだが、これほど多くの参加者がいれば、致命的なものにもなりうる。

「トーナメントはもう始まっているはずだ」ネロが唸る。

私は観客席の間から空を見上げ、ブラッドムーンの上昇に気づく。その力が血管の中を駆け巡るのを感じる。体内に過剰なアドレナリンが流れ込み、それを解放したいという衝動に駆られる。

トー...