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第42話

ハドリアン

恐怖の波が体中を駆け巡り、狼の姿に変わりそうになる。この感覚は何の前触れもなく訪れ、理由もわからない。一瞬、ネロに何かが起きているのではないかと思った。

「何が起きているんだ?」

「わからない」彼は言う。

私たちは同時に伴侶に意識を向ける。彼女の白い肌には緑がかった色が浮かんでいる。灰色の瞳には恐怖の色が混じり、体は震えている。

彼女の視線はゼノ将軍に釘付けだ。

ゼノ将軍は眉を寄せて彼女を見つめ、眉間に深いしわを作っている。

「入口で立ち止まるな」父が食卓の上座から命じる。

エマは父の轟く声に身をすくめ、私は彼女をこの部屋からできるだけ遠ざけたくなる。唸り声を抑えな...