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第29話

ネロは恋する子犬のように転がり回って尻尾を振っている。恐ろしい狼というより、まるで子犬だ。彼は皆が信じているような強く、力強く、恐れられる狼のように振る舞うべきなのに、エマに完全にメロメロになっている。彼女が私たちを殺せる銀のダガーを隠していたという事実にも全く動じていない。彼はその事実に目が眩んでいるのだ。

「彼女は俺たちを救ってくれたんだ」彼は反論する。

エマは身を引かない。彼女の目は少し伏せられ、欲望で曇っている。彼女の香りは信じられないほど甘くなる。どういうわけか、彼女もつがいの絆に影響されているようだ。これは彼女の望むことではない。彼女は私を心底嫌っていることを明らかにした。

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