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第19話

エマ

ハドリアン王子は階段を一気に駆け上がる。私たちはいくつもの扉を通り抜け、暗い寝室にたどり着く。彼は私を十人分はあろうかという大きなベッドに下ろす。部屋には青銅のベッド、緑のベルベットのソファ、そして上部がアーチ状になった床から天井まで届く窓が三つあるだけだ。窓からは欠けていく月と、宮殿を取り巻く庭園の美しい景色が見える。

ハドリアン王子は部屋の反対側に立っている。ドアに向かって立ち、拳を壁に押し当てている。彼は首に巻いていたボウタイを引きちぎり、うなだれる。「出ていくべきだ」彼の肩と首の筋肉には緊張が走っている。彼が私に言っているのか、それとも自分自身に言い聞かせようとしているのかわ...