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第17話

ハドリアン

蝶ネクタイのストラップが喉元で緩み、シャツの襟が首の横に食い込んでいる。一番上のボタンを緩め、机の上のウイスキーのタンブラーを手に取る。オフィスの窓から外を覗きながら、大きく一口飲む。宮殿は人々で溢れかえっている。私の部屋の静けさから、入口を通って歩く人々の流れが見える。全員が正装に身を包んでいる。これはすべて見て、見られるためのものだ。

こんな時、私は将来王になる資格があるとは思えない。社交的な側面が苦手なんだ。自分ではない誰かのふりをするのが。私は王国の人々が幸せな生活を送り、国土が繁栄することを望んでいるが、世界に自分の富を見せびらかしたくはない。自由時間は森の中か、伴侶...