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第44話

三人称視点

式典を早く終わらせたいという思いから、ネロンは席を立ち、舞台上の演壇へと素早く歩み寄った。キヤの茶色の瞳は彼の一挙手一投足を追い、明らかに取り乱した様子に薄笑いを浮かべた。アルファの乱れた姿を見ることは、彼女の内なる深い部分を喜ばせた。彼の視線が自分の肌を焼くように感じながら。

全員がアルファが演壇に立っていることに気づき、すべての会話が静寂へと消えていった。

「皆さんは、なぜ私がこの場に集まっていただいたのか不思議に思っていることでしょう」ネロンの声はホール全体に響き渡り、清潔な壁に反響した。未つがいのメスオオカミたちはアルファに見とれて席で身をよじらせる一方、...