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第37話

「人間の心の皮肉は、それが自分の魂の対極の存在と不在の両方に苦しめられることだ」―クリスタル・ウッズ

ネロン

「疑わしいな」父は頭を振った。「正直に言うと、そのほうがいい。お前の母親の匂いを持つ別の狼がいたら、アンジェロと俺は狂ってしまうだろう」

彼は立ち上がり、家族の写真が飾られている暖炉の棚に向かった。彼の手は結婚式の日の母の写真を取る。純金のように純粋な笑顔で、白い衣装に包まれた彼女。「心は強力な力だ、ネロン。体のすべてを支配している。それがなければ、私たちは無だ。それは私たちを強くも弱くもする。最高の喜びにも最低の苦しみにも導く」

彼の親指が母の写真をなぞり、青い目...