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第209話

「未知なるものこそ人を引きつける」― E.A.ブッキアネリ

キヤ

ネロンは昨夜見た幻視について何も話そうとしなかった。私がその話題を切り出そうとすると、彼はただ黙りこくってしまった。彼が見たものは恐怖の檻に彼を閉じ込めてしまったようで、私にはどうやって彼を解放すればいいのかわからなかった。

朝目覚めた時、彼が命がけで私にしがみついていたのは明らかな兆候だった。

彼を助けたいけれど、今は行き詰まっている。ネロンは本当に見たものを私に話すのが怖いのか、それとも黙っていることで幻視が現実にならないようにしているのか。それは彼が私を失うことに関わるものだということだけは確かだ。それ...