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第173話

「危険の中心部にこそ安全がある」― ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ

ネロン

私は死んでいるのか?

私の体は形而上学的な崖の上でぐらつき、人間の儚さの両方の状態を隔てる薄く目に見えない線の上に浮かんでいた。生と死。生者の国と死者の世界。不思議なことに、傷からの包み込むような痛みは無に消えていった。甘い陶酔感が穏やかな海の波のように体中を駆け巡り、頭から足先まで心地よい涼しさに浸した。平和。静寂。

安全だと感じた。守られている。

邪悪な血液が肺でゴロゴロ言うことなく呼吸ができた。癒されていた。私は癒されていたが、死の境界線上に座り、それは私を腕を広げて抱擁へと誘っていた...