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第157話

混沌には独特の、言葉では表現できない香りがある。恐怖と汗の混合物だと言う者もいれば、血と涙だと言う者もいる。今夜、混沌は不安と木の香りがした。アドレナリンが脚に駆け巡る中、樫の木々が視界の端でぼんやりと流れていく。オマールの警告が壊れたレコードのように私の頭の中で繰り返され、レースを貫く刃のように私の心を切り裂いていた。一歩一歩、跳躍するごとに、私は生まれ育った土地に近づいていった。

ジルコン・ムーンはまたしても攻撃を受けている。今回は何か違う。夜はすでに数時間前に訪れていたが、不自然な闇が木々を通して広がり、光の名残りをすべて飲み込んでいた。月は狼にとって闇の中の導き手だが、彼女でさえこの...