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第149話

「愛も悪も全てを征服するわけではないが、悪はもっと欺く」― ローレル・K・ハミルトン

三人称視点

黒と金の刺繍が施されたパドルブラシが、根元から毛先まで漆黒の髪をなでていく。それを握るのは青白い手。キヤは全身鏡の前の椅子に座り、黒いナイトガウンを纏い、膝にはテディベアを抱えていた。彼女の紅い瞳はゆっくりと閉じ、自分へのご褒美に身を委ね、小さく喉を鳴らしていた。髪の世話をする女性——オシリスの家に住む多くのハイブリッドの一人——は静かに安堵のため息をついた。彼女の白い肌に残る薄い赤い傷跡には、恐ろしい訓練の日の生々しい記憶が結びついていた。その日、彼女は目の前の女性の残忍な微笑み...