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第116話

「歩く者が道を選ぶのか、それとも道が歩く者を選ぶのか?」―ガース・ニックス

ネロン

「指輪をしていないね」

「え?」

「アルファの指輪だよ」キヤは私の指輪のない指を指さした。「あなたがそれをつけているところを見たことがないわ」

ああ、アルファの指輪。私の家系のアルファたちが世代から世代へと受け継いできた象徴的な品だ。祖父から父へ、父から私へ、そして私は長子へと渡すことになっている。中央に誇らしげにジルコンの石をあしらった分厚い金の指輪—輝く青いダイヤモンドが我がパックの王としての名誉を担っている。

私はこの数年間、あれをつけていない。

指を曲げ伸ばしながら、指輪に拘束...