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第10話

「偉大なる母は、代替不可能な至高の愛を持つ慈悲深い存在である」―ウェイン・チリサ

ハリマ

静寂。音の完全なる不在。

静寂に満ちた世界は、生きるに値する世界だった。そこには痛みも、悲しみも、涙もなかった。ただ私一人が、完全な闇の虚無の中にいるだけ。死とはいつの時代も、人と獣の心に植え付けられた恐怖の対象だった。しかし本当は、生きている世界こそが恐れるべきものだ。現世は憂鬱に満ちており、運が良ければ、それに打ち勝つことができる。

私はそうした。

悲惨さと腐敗に満ちた世界は私の背後に残った。もはや私は存在していないのだから。私は死に、二度と戻ることはない。それは喜ばしい出来事だった。...