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第623話

彼女は島の全容を知らなかった。ただ、島の奥へ奥へと進むほど、木々がより密集していることだけは分かっていた。

正午だというのに、昨夜の雨のせいでジャングルは非常に暗かった。枝からは雨滴が滴り、草には露が宿り、地面はぬかるんでいた。

クインは森の中をよろめきながら歩き、何度もつまずいた。彼女のバスローブは土や泥で汚れ、足首は擦り傷だらけで、足の裏は鋭い石で切り傷を負っていた。

「アレクサンダー」

彼女の声は涙で震え、それほど大きくなかった。叫びたかったのに、実際に出てきたのはかすかに聞こえる鳴き声のようなものだった。

クインは何度も地面に倒れては立ち上がり、痛みを無視して涙を拭いながら、...