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第530話

温かい液体が彼の額に滴り落ちた。一滴、二滴、そしてもっと多く。

オリオンは突然目を開け、クインが彼の前にひざまずき、ボディガードの手にあるダガーをしっかりと握っているのを見て驚愕した。

彼女は歯を食いしばり、苦痛に眉をひそめていた。額の冷や汗が顔の涙と混じり合い、蒼白い頬に集まり、顎に溜まっていた。

クインは深呼吸を繰り返し、手のひらの痛みを抑えていた。新鮮な血がダガーを伝って流れていた。

その半分は地面に滴り落ち、残りの半分はオリオンの額に落ち、彼の顔を伝い、長い深紅の筋を残していた。

「クイン」オリオンは彼女の名前をつぶやいた。

クインは唇を震わせ、しぶしぶ彼を見た後、アレクサン...