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第309話

クインの中で、ある記憶が揺り動いた。彼女がつまずいた時、若い大学生が助けてくれたことを思い出した。彼の笑顔は輝いていて、若さの活力に満ちあふれ、今フィンが見せている笑顔とそっくりだった。

思考の霞の中に迷い込んでいた彼女は、フィンが頭を下げ、ポケットから絆創膏を取り出すのを見つめていた。彼は体格からは想像できないほど優しく、慎重に絆創膏を開き、彼女の額に貼った。「さっきのこと、怪我させてしまって申し訳ない」と、彼は本物の心配が滲む声で言った。

落ち着きを取り戻したクインは一歩下がり、手で軽く払うようなしぐさをした。「大丈夫よ」と彼女は彼に保証した。

フィンは一瞬彼女を見つめ、思慮深げな眼...