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第1005話

クインはまだ彼に背を向けたままだった。

部屋は静まり返っていた。彼女はまるで世界全体が静寂に包まれるかのように、永遠とも思える時間を待った。そして、静かに手を引き離した。

彼女の指が手首の盛り上がった傷跡に触れた。目を固く閉じ、少しずつ傷跡を剥がし始めた。

かさぶたは肉に食い込んでおり、引くたびに刃物で切られるような痛みがあった。最初に切られた時よりもさらに酷い痛みだった。

彼女は指以外を動かす勇気はなかった。歯を食いしばり、息を止めて耐えた。

小さな隙間を開けた瞬間、彼女は滑らかな液体を感じ、安堵のため息をついた。

胸の痛みと圧迫感がバランスを取った。もう痛みは感じず、ただ解放へ...