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第172話

リムジンは急に曲がり、ハフヒルズの麓に広がる敷地へと続く開いた鉄の門をくぐった。

「運転手、仕切りを下げてください」私は素早くインターコム越しに運転手に指示した。シャツの下に着けている防弾チョッキを調整し、銃に手が届く位置に構えた。油断はできない。

運転席と後部座席を分ける格納式の仕切りが壁の収納部に消えると、周囲の景色が遮るもののない視界に入ってきた。私は不意の動きがないか注意深く見張った。幸い、何も異常はなかった。

邸宅へと続く私道の両側には、新しく刈り込まれた長方形の低木が並び、様々な色のチューリップが満開に咲き誇っていた。黄色のガーデンライトが連なり、明るく照らされた現代的な邸宅...