Read with BonusRead with Bonus

第30話

翌朝が明けた。

「サマンサ、走らないで。下に行く前に髪を結んでおきなさい」

ノラは子供部屋に行き、髪の毛を振り乱して階段を駆け降りようとしていた娘を捕まえ、椅子に座らせた。

「ママ、早く！トーマスさんに会いに行きたいの！」サマンサは小さな指をもじもじさせた。

ノラが娘の髪をとかしながら、冗談めかして叱った。「この恩知らずな子、どうして朝早くからママに会いに急いでくる姿は見たことがないのかしら？」

「だってママは病気じゃないもん！トーマスさんは悲しいの、ベッドに閉じ込められて動けないの。早く下に行って彼に付き添わなきゃ」

ノラは言葉に詰まった。

娘の髪を二つの小さな三つ編みに結んだ後...