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第175章

キング

目が覚めると、アリッサはベッドにいない。

それだけで、心臓が戦太鼓のように激しく鳴り始めた。

一瞬、恐ろしい考えが頭をよぎる。彼女が逃げたのではないか。俺たちを、俺を置いて。

なぜそんな考えが浮かんだのかさえわからないが、一度浮かんでしまうと振り払うことができない。

スマホを手に取ってアプリをチェックする——ドアの警報も、外の動きも、侵入の形跡もない。

それでも、彼女の不在が胸を焼く。

カメラの映像を確認すると、彼女の姿を見た瞬間、胸のつかえが取れた。キッチンにいる。仕事をするときにいつもするあの髪型——乱れているのに何故か色っぽい——で髪を結い上げ、ボウルの中の何かをかき混ぜながら...