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第153話

アテナの視点

混沌。私たちの状況を考えれば、軽々しく使う言葉ではないが、この瞬間、私たち二人の間に起きていることを表現するには、混沌こそがもっともふさわしい言葉だった。

アレスと私が戦い続ける中、周囲からは徐々に大きくなる唸り声と遠吠えが聞こえてくる。私たちは互いの毛皮に牙と爪を立てながら攻撃を繰り返していた。アレスは私の脇腹に噛みつこうとするが、私はいつも彼の牙の届かない位置に跳んで避けていた。

アレスは攻撃が外れるたびに唸り声を上げる。

「アレス、頼むから正気に戻って」と私は懇願する。私の声は私たちが共有する絆を伝わり、リリーの魔法から彼を解放する助けになればと願った。

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