狼と妖精

第240話

エリックの視点

彼女に触れようと、もっと近くに引き寄せようと手を伸ばした時、私が触れたのは…

何もなかった。

私の手が触れた場所には空虚な空間が広がっていた。シーツに顔を埋めると、昨夜と同じバラの香りがした。

「アヴァ、お前…」私は目を見開いた。何かがおかしい。私はそう思いながら目を開け、すぐに起き上がった。

辺りを見回すと、サマンサがいないことにほっとした。深呼吸すると、サマンサのおなじみの香りがした。

柑橘系の香り。

少し混乱して、私は自分の髪を引っ張った。

「昨夜、彼女はここにいた。彼女の深い香りさえ嗅いだ。間違いない。彼女のバラの香りと…

その考えに、私の体は青ざめた...