運命の手

第108話

獣は主人の元へ帰る途中だった。だが、あとどれほど長く彼女の下にいられるのか疑問だった。彼女が昔仕掛けた血の契約は薄れつつあった。新月ごとにそれが弱まっていくのを感じていた。自由になるのは時間の問題だった。

彼女のストレス発散の的や使い走りをするのにはうんざりしていた。ただ辛抱強くなければならない。今はじっと時を待ち、契約が弱まるほど、自分の記憶を取り戻せることを願っていた。

すでに断片的な映像が思い出せるようになっていたが、それらはあまり意味をなさなかった。大きな戦いの記憶で、彼は鎖帷子と鎧を身につけ馬に乗っていた。空に剣を掲げ、何かを見ようとした瞬間、記憶は途切れた。

もう一つの記憶は...