白い狼

第132話

ドアが開いた時、彼の息は喉で詰まった。部屋の中は静まり返っていた。彼の目は彼女を探したが、ベッドは空で、まだ整えられたままだった。

胸の鼓動が耳に響く。これほど緊張したことはかつてなかった。数え切れないほどの悪党や敵と対峙し、死闘を繰り広げてきたが、これはすべて新しい経験だった。

胸が締め付けられる。拷問のようだった。もし素手で自分の心臓を切り取って彼女に捧げることができるなら、彼女を喜ばせるためだけにそうするだろう。だからこそ彼はここに来た、ほんのわずかな可能性のために自分をさらけ出す覚悟で。長年かけて一つ一つ積み上げてきた壁は、彼女の存在の前でひび割れていった。

部屋の奥からろうそく...