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第119話

彼らの視線が合い、互いの瞳に釘付けになった。夕食会は続いていたが、周りの世界は彼らにとって徐々に薄れていくようだった。

彼は手を伸ばして彼女に触れたいと思った。彼女を腕に抱いたらどんな感じがするのだろうか。彼女の笑い声はどんな音色なのだろうと疑問に思った。彼女の笑い声を聞いたことがなく、声さえほとんど聞いたことがないと気づいた。

それは耐えられないほどになった。このままでどうやって過ごせばいいのか分からなかった。部屋にいる全員の前で彼女を自分のものだと宣言したい衝動と戦った。

エンゾはフォークを握りしめ、手を伸ばさないように必死に抑えていた。

腕を小突かれ、エンゾは我に返った。

「そ...