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第54話

アパートまでの道のり、ジュリアンは黙ったまま運転していた。車の揺れで私の吐き気はどんどん強くなっていったが、何とかこの気分の悪さを抑えようと努めた。ロビーを通り、エレベーターに乗る間も、ジュリアンは私に一言も話しかけなかった。そして私たちが階の小さな廊下に足を踏み入れると、私は次に何をすべきか分からず、その場で固まってしまった。

ジュリアンは私の優柔不断さなど気にもせず自分のドアへと向かい、それを大きく開けると、入らずに腕を組んだ。恐る恐る私の目が彼の目と合うと、彼が頭で中を指し示したとき、私は息が詰まる思いがした。

私は恐る恐る足取りでアパートに入り、ジュリアンはすぐ後に続いた。ドアが閉...