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第117話

私は手首の時計をちらりと見る。細い針が秒刻みに動いている。頭を傾げ、今度は天井を見つめる。明るい照明と窓から差し込む月明かりが混ざり合っている。外は夜が更け、建物の中には警備員と夜勤の従業員以外、誰もいない。

正直なところ、アンジェリーの温もりに包まれて家にいたいところだが、ここにいる。自分のオフィスで、勤務終了から3時間後、本来ならもっと早く片付けておくべきだったことを終わらせるために待っている。

「あのタイラーという奴に全ての功績を持っていかれるわけにはいかないよな?」と独り言を言いながら、深呼吸する...

突然、エレベーターの音が聞こえる。この空っぽのフロアの夜の静けさの中では、あ...