第3話
ゼインは夜のクラブを決然とした足取りで歩いていた。3階の事務所にいたとき、ジャックスから電話があり、金庫室に来るよう頼まれたのだ。ジャックスがわざわざ呼ぶからには、ゼイン自身が対処すべき問題があるに違いなかった。それでも仕事の邪魔をされたことにイライラしており、その原因を作った者には後で報いを与えるつもりだった。二人の女性が彼に声をかけ、一緒に来るよう誘うと、ゼインは微笑んだ。立ち止まって話す時間はなかったが、彼は二人の体を目で舐めるように見た。状況を処理した後で戻ってくるべきだと心に留めた。クラブの裏側へ続くドアに着くと、カードをスキャナーにかざしてコードを入力した。白い廊下に足を踏み入れると、ため息をつき、背後でドアが閉まるとともに音楽と人々の声が遮られて緊張が解けた。ナイトクラブは良い投資先であり、良い活動拠点でもあった。しかし、その騒音は正気の人間さえも狂わせるほどだった。廊下を歩いていくと、前方にジャックスの姿が見えた。右腕の男になぜ呼び出されたのか尋ねようとした矢先、大きな音が廊下に響き渡った。二人は反射的に銃に手をやったが、実際に武器を抜くことはなかった。女性の大声が響き、ゼインには言葉は聞き取れなかったが、明らかに怒り狂っているようだった。
「ゼイン、問題が起きている」とジャックスが言った。
「そりゃわかってるよ、何が起きてる？」ゼインは尋ねた。元恋人や元彼女の一人がヒステリーを起こしているのかと一瞬考えたが、最近女性を怒らせた記憶はなかった。
「デイブとトビアスが回収から戻ってきた」とジャックスが告げた。
「金は回収したのか？」ゼインは単なる借金取り立てのために呼び出されたことにイライラして尋ねた。
「そう言えるかもな」ジャックスは真剣な表情で言った。金庫室の中から再び悲鳴が聞こえ、ゼインはもう十分だと思った。彼はドアに近づき、鍵を開けて押し開けた。運良く、飛んできたホチキスは彼の頭をかすめてドア枠に当たった。ゼインの目はそれが床に落ちる様子を追った。顔を上げると、天使が見えた。それが天使ではなく、怯えて泣いている女性だと気づくまで少し時間がかかった。
青あざのある頬と切れた唇、涙で濡れた顔でさえ、彼女は美しかった。ハチミツ色のブロンドの髪は、かつてはポニーテールだったのだろうが、今は大きな束が肩に垂れ、緩んだヘアタイは後ろの髪をかろうじてまとめているだけだった。泣きはらした淡い青い瞳は腫れていたが、その美しさは損なわれていなかった。分厚いセーターとママジーンズでも、彼女の体の曲線を隠すことはできず、それはゼインを硬くさせた。豊満な体が彼を呼んでいた。彼は不本意ながらも女性から目を離し、彼女が部下に向かってペンを投げつけるのを見た。二人の部下は彼を見ていたため、それが飛んでくるのに気づかなかった。ペンはトビアスの胸に軽く当たってから床に落ちた。ゼインはデイブが彼を見返したときに少し青ざめたことに気づいた。興味深いな、と彼は思った。ジャックスはゼインの右肩の後ろに立ち、その光景を見ていた。女性は別のペンを手に取り、デイブとトビアスに向かって投げた。それは二人の間の空中を飛んだ。ゼインは今では彼女が叫んでいる言葉を聞き取ることができた。
「近づかないで、私に近づかないで、離れて」と彼女は何度も叫んでいた。投げるものがなくなっても、彼女は叫び続けた。ゼインは一体何が起きているのか非常に興味があったが、女性が騒ぎ立てているせいで集中できなかった。
彼はテーブルを回って彼女に近づいた。彼女は隅に後退し、両手を前に突き出して同じ言葉を繰り返し叫んでいた。ゼインは片手で彼女の両手を掴み、彼女の目の前に立って、その輝く瞳をじっと見た。
「黙れ！」と彼は怒鳴った。彼女は黙り込み、目に涙が溜まり始め、唇が震えているのが見えた。くそっ、と彼は思った。多くの男性と同様、泣く女性は彼を恐怖で震えさせた。百人の敵と銃撃戦をするよりも、一人の泣く女性を相手にする方が怖かった。彼の解決策は彼女の手を放し、手首の周りにある鮮やかな赤い跡に気づきつつ、彼女に背を向けることだった。見えなければ気にならない。背後から聞こえる静かなすすり泣きを完全に無視することはできなかったが、彼はそれを無視した。「誰か説明してくれないか、なぜ私の紙幣計数機が床に叩きつけられ、なぜ俺が飛んでくるホチキスで首を切られそうになったのか？」と彼は部屋にいる他の三人の男に向かって唸った。部屋は女性の柔らかなすすり泣きを除いて静かだった。ゼインはデイブとトビアスを睨みつけた。「それが答えるには難しすぎるようだから、基本から始めよう。回収に行ったのか？」ゼインは血の気が上るのを感じながら尋ねた。もしすぐに答えが得られなければ、彼は自分の行動に責任を持てなくなるだろう。誰かの首が飛ぶことになる。それが文字通り誰かの体から切り離される可能性は五分五分だった。
「はい、ボス、行きました」とデイブは言った。
「回収したのか？」ゼインはため息をついた。
「しました。コブラーには金がなかった。でも彼は姪の奉仕を借金返済の手段として提供しました」トビアスはニヤリと笑った。ゼインは男の顔を殴りたいという原始的な衝動を感じた。彼は深呼吸をして、この男はファミリーに新しく加わったばかりだと自分に言い聞かせた。一度だけ過ちは許される。一方、デイブはもっとわきまえているべきだった。
「説明しろ」ゼインは男に要求した。
「手ぶらで帰るよりはいい取引に思えたんです」デイブは肩をすくめた。ゼインはジャックスに視線を送り、彼の右腕の男はうなずいた。彼はゼインが何を望んでいるかを理解していた。
「ジャックスと一緒に行け。お前らのクソみたいな尻拭いは俺がする」ゼインは唸った。
「はい、ボス」デイブは言った。トビアスはゼインに反抗的な、そして自分が正当に所有すると感じるものを取り戻したいという欲望を示す視線を送った。女性のことだ、とゼインは思った。他の三人の男が部屋を出るまで待ってから、彼は再び振り返った。乱れた状態でさえ、若い女性は無邪気に見え、彼女の周りには善良さのオーラが漂っていた。ゼインは彼女を堕落させ、人生の暗い側面を見せ、彼女を自分と共に地獄に縛り付けたいという欲求を感じた。彼はこれまで彼女のような人に会ったことがなく、彼女に、彼女と共に何ができるかという考えは、彼に快楽的な震えをもたらした。邪悪な笑みが彼の唇に広がった。
アヴァは部屋の隅に閉じ込められ、恐怖で固まっていた。金髪の男がハンサムだったとしたら、この男はまるで夢の中から生まれ出た生き物のようで、引き締まった体を見せつけるバーガンディ色のスリーピーススーツを着ていた。こんなに恐怖を感じていなければ、アヴァはよだれを垂らしていただろう。彼が部屋に入った瞬間、彼女の脳は後ろに撫でつけられた黒髪、淡い灰色の瞳、夕方の影のような無精ひげに気づいた。最初は彼が救世主になってくれると期待したが、彼は彼女を隅に追い詰め、彼女に向かって怒鳴った。彼は他の三人の男のボスであるようだった。アヴァはふと、この場所がスーツを着たイケメンだらけなのかと考えた。しかしすぐにその考えを状況に不適切だと脇に追いやった。チビ男は彼女の叔父が彼らに金を借りていて返せないこと、そして彼が彼女の体を借金返済のために売ったと言っていた。でもそれは本当のはずがない。叔父にギャンブル依存症があったのは事実だし、彼が彼女を気にかけていないと感じることもよくあった。しかし彼女をこんな男たちに売るなんて？いや、信じられない。そして今、彼女はこの巨大で魅力的な男の後ろに閉じ込められていた。ドアが閉まり二人きりになると、彼は振り返り、氷のような冷たい笑みを浮かべながらアヴァを見下ろした。
「ジョナス・コブラーはお前の叔父か？」と彼は尋ねた。アヴァの体は恐怖で震え、下唇の震えを止めようとした。彼の目の中にある何かは、もし私がこれを生き延びたとしても、永遠に悪夢に残るだろうと彼女は思った。