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第9話

私はキッチンカウンターで黙って座っている。グレースは友達の家でお泊まり会をしている。学校は教師会議のため今週いっぱいは休みだ。何週間ぶりかで家が完全に私だけのものになった。それなのに、本でくつろぐどころか、何時間も前に大理石のカウンターに置いた首飾りを見つめたままでいる。あの遠い夏の記憶が頭の中を駆け巡っている。

病院を出る前にクインにメールを送った。今回は彼との関係を専門的なものに留めたいと伝えるために。送信した瞬間に後悔した。過去の映像が頭から離れなくなったのだ。特に、クインと過ごした最後の夜のことが何度も思い出される。あの夜、私は彼に聖ミカエルのメダルを渡したのだ。

その夜、私たちは...