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第115話

その日はのろのろと過ぎていったが、ようやく九時近くになった。両親に別れを告げて、車に飛び乗る。キリアンの家へ向かう短い道のりで、私はすっかり浮かれていた。彼の家に行ったのはたった一度だけ。それも署の全員を招いたバーベキューパーティーの時だった。こっそり抜け出して彼の寝室を探し回りたい衝動に駆られたけど、実際にやるには怖すぎた。それでも見えるものすべてを記憶しようとした。巨大な変態のように、彼の心地よいソファに潜り込んでクンクン嗅ぎさえしたんだ。かぎ取った香水の匂いは、完全に価値があった。

キリアンの家の車道に車を停めるころには、すっかり暗くなっていた。ほとんど走るようにして彼のドアまで行く。...