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第72話

アブラハムの広い背中と彫刻のような筋肉を見つめていたが、その完璧な体に集中することができない。緊急感と苦悩が私の心を喉元まで押し上げているから。

ゆっくりとドレスの肩紐を持ち上げ、布地で胸を隠しながら、アブラハムが心の内を語るのを待つ...。でも、いつもと違って、彼は何も言わない。ただ背中を向けたまま、新たなウイスキーのグラスを注いでいる。

テーブルから降りようとするが、太ももの間の混沌を強く意識してしまう。私の快楽と興奮がアブラハムのものと混ざり合ったその跡を。

それに気づくと、ついさっき起きたすべてのことの現実が一気に押し寄せてくる。息ができなくなるほど、突然、胃を殴られたような現実...